タイヤは製品ごとに、どの規格に沿って作られるかが決まっています。
自動車が装着するタイヤの規格はISO(国際標準化機構規格)によって大枠が定められていますが、細かな規格は国ごとに異なります。
日本・・・JATMA規格
ヨーロッパ諸国・・・ETRTO規格
アメリカ・・・TRA規格
ドイツ・・・DIN規格
タイヤ規格が異なることで厄介なのが、空気圧の管理。
その規格ごとに、入れた空気圧に対しての負荷能力が変わってきます。
「この規格のタイヤだったら、空気圧は〇〇〇KPaまで入れられるな」
とか…
「この空気圧だと、この規格のタイヤで支えられる重さは〇〇〇kgまでだな」
…という具合に、タイヤの空気圧とタイヤの規格というのは切っても切れない関係にあります。
つまりタイヤを購入する際や空気圧を調整する際は、規格にも注意が必要になってくるということです。
この手の話はプロでもあまり知らない場合もありますし、最近はインターネットでタイヤを購入するのも一般的になってきました。
基本的なところだけでも知っておくと、タイヤを履き替える際に役立つかもしれません。
主なタイヤの規格について
国産車の純正タイヤは国内で定められた規格に基づいて製造されたタイヤである場合がほとんどです。
その一方で、日本でも海外の規格に沿って製造されたタイヤが販売されていることがあります。
アジアンタイヤがこれからも国内シェアを伸ばしてくるのであれば、今後ますます海外の規格でつくられたタイヤに触れる機会は増えるでしょう。
今回は代表的かつ主要な、2つの規格について解説していきたいとおもいます。
JATMA
1つめは日本のタイヤの規格です。
日本国内においては圧倒的にメジャーな存在の規格となります。
JATMA(ジャトマ)規格とは、「一般社団法人 日本自動車タイヤ協会」の規格です。
協会の名称を英語にすると、Japan Automobile Tyre Manufacturers Associationですので、頭文字をとってJATMAとしているわけです。
日本の全てのタイヤメーカーが会員となっているほか、ミシュランやグッドイヤーといった海外メーカーも準会員となっています。
なので日本で販売される、国産車向けにつくられたタイヤのほとんどは、この規格に基づいて製造されています。
この規格で製造されたタイヤの場合、充填できる空気圧の上限は240kPaまで、下限は180 kPa となっています。
ETRTO
2つめはヨーロッパの規格です。
ETRTOとは、「欧州タイヤとリム技術機関」、European Tyre and Rim Technical Organisation の略称です。
この規格は自動車のみならず、バイクや自転車などにも採用されているとのこと。
自動車用タイヤだと…
- ミシュランやピレリなどヨーロッパのメーカーのタイヤ
- ハンコックやナンカンなどのアジアンタイヤ
- 日本のタイヤメーカーの海外向けタイヤ
など主に海外からの輸入タイヤが該当します。
ETRTOについてはここから更に、2つに細分化されます。
特にエクストラロード規格については、これからも増え続ける可能性が高いことから、大まかな内容だけでも押さえておくと良いとおもいます。
スタンダード規格
ETRTOの定める規格の1つが、スタンダード(STD)規格です。
JATMA規格と同じ空気圧であればSTD規格の方が負荷能力は若干低いです。
よって、JATMA規格のタイヤから履き替えた場合、それまでよりも高い空気圧に設定しなければなりません。
入れても良い空気圧の上限は250kPaまで、下限は180 kPa となっています。
エクストラロード規格
ETRTOの定める規格のもう1つが、エクストラロード(XL)規格です。
レインフォースド※(ReF)規格と呼ばれるものもあってややこしいですが、基本的に両者は同じ規格です。(XL規格=ReF規格)
※…リインフォースドと言ったりもします
エクストラロードかレインフォースドか。タイヤメーカーによって、どちらの名称を採用するかが異なるだけとなります。
エクストラロードを直訳すると「余分の荷重」、レインフォースドは「補強された」となります。
内部構造を強くすることで、通常よりも多く空気を入れることが可能になった強化タイヤの規格です。
入れても良い空気圧の上限はJATMAやSTD規格からグンと上がって、290KPaまでとなります。下限は200 kPa です。
XL規格は高級車やスポーツカーなどの高性能車に採用されることが多いほか、扁平率の低いタイヤでよく見る規格となります。
マイカーをインチアップしている方にはおなじみの規格かもしれません。
JATMAとETRTO、両者の特徴について
日本では完全な多数派であるJATMA規格ですが、世界的にみるとETRTO規格が圧倒的多数派に転じます。
その点においてJATMAは、ガラパゴス的な規格と言えるでしょう。
ではその特徴とはなにか?
それはETRTO(XL・ReF含む)規格に比べて「タイヤ自体が頑丈である」ことです。
ここで少し疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
「ヨーロッパの方がクルマの速度レンジが高いから、タイヤも頑丈に出来てるんじゃないの?」
「レインフォースドって[補強された]って意味なんでしょ?じゃあ、XL・RF規格の方が頑丈なんじゃ…」
確かにイメージ的にはそうですよね。
ここで思い出してほしいのが、XL規格の説明です。
通常よりも多く空気を入れることが可能になった強化タイヤ
空気をたくさん入れることで負荷能力を高められるのが、XL規格のタイヤの特徴です。
裏を返せば、空気をたくさん入れないと高い負荷能力は発生できないということ。
その点、JATMAは比較的低い空気圧でも十分な負荷能力を発揮できるような造りになっています。これは、タイヤそのものが頑丈だからに他なりません。
なにやら不思議な話のような気もしますが、タイヤの負荷能力を高めるには大きく2つのアプローチがあるというだけです。
- タイヤそのものを頑丈につくる
- タイヤの中身をパンパンにして強くする
アプローチの違いは、国民性や交通事情、重視する性能などの要素から生まれるものと推察されますが、この辺のハナシについては下調べが出来ていませんので、今回はとりあえずここまで。
まとめると、
- 日本国内で主流なのはJATMA規格である
- 世界基準はETRTO規格である
- JATMA規格の方が低い空気圧で高い負荷能力が発揮できるような構造となっている。
- ETRTO規格、とりわけXL・ReF規格は高い負荷能力が発揮できるよう多くの空気が入れられる構造となっている。
規格が異なることで起きるトラブルについて
国産車の場合、運転席ドア開口部に「指定空気圧表示」シールが貼られています。

シールに書かれている数値は、JATMA規格の国内向けタイヤを基準にしています。
その指定空気圧に合わせた ETRTO規格のタイヤ では、必要な空気圧が確保されていないケースがほとんどです。
タイヤに空気が足りないということは、負荷能力も足りていないということです。
特にXL・ReF規格のタイヤに指定空気圧しか空気を入れなかった場合は負荷能力が大幅に落ちてしまうことになりますので、 とても危険な状態となります。
空気圧(もしくは負荷能力)が不足すると…
- 転がり抵抗が増える(燃費悪化)
- 偏摩耗(片減り、ショルダー部)。
- 操縦安定性が低下。
- ハイドロプレーニング現象、スタンディングウェーブ現象が発生する可能性が高まる
- ホイールからタイヤが外れやすくなる
- コード切れやトレッドセパレーションなど、タイヤの損傷の可能性が高まる
上記のような大小さまざまなトラブル・アクシデントの発生が予想されます。
これらを防ぐにはまず、「自分の車に装着されているタイヤの規格はどれなのか?」
それを確認することから始まります。
自分のクルマのタイヤの規格はどれなのか?調べる方法について
メーカーのサイトにアクセスしてカタログから確認する方法もあるのですが、タイヤのラインナップも膨大ですし、タイヤ規格が記載されている箇所を探し出すのも大変です。
ということで今回はシンプルな方法をご紹介します。
マイカーに装着されているタイヤの規格について知りたい方は、タイヤのサイドウォール部を見てみてください。
2ステップで、
- JATMAか?
- ETRTO・スタンダードか?
- ETRTO・エクストラロード(レインフォースド)か?
確認することができます。
ですが…今回は大サービス!上と変わらず2つのステップで、
- JATMAか?
- ETRTO・スタンダードか?
- ETRTO・エクストラロード(レインフォースド)か?
- RTAか?
これら4つの規格までも網羅した調べ方をお教えいたしましょう。
このときに
- 履いているタイヤのロードインデックス(LI値)
- 「指定空気圧表示」シール
も併せてチェックしておくと、適正空気圧までも調べることが可能になります。
ステップ1 Ⓔのマークをさがす
正確にはE4(ないしE3)を〇印で囲ったようなマークをさがします。
マークは直径1㎝にも満たないような小さなマークですので、見落とさないようによく見ましょう。
このマークは ETRTO 規格であることを示すものとなります。
マークがあった
そのタイヤは ETRTO 規格 です。ステップ2-1へ進みます。
マークが無かった
そのタイヤは「JATMA規格」か「RTA規格」です。ステップ2-2へ進みます。
ステップ2-1 「EXTRA LOAD」もしくは「REINFORCED」の表記をさがす
こちらも小さな表記ですのでしっかりチェックしてください。
表記があった
【確認完了】 そのタイヤは「ETRTO・エクストラロード(レインフォースド)規格」です。
表記がなかった
【確認完了】 そのタイヤは「ETRTO・スタンダード規格」です。
ステップ2-2 タイヤサイズの先頭がPもしくはLTで始まるか確認する
タイヤサイズ表示部分の一番初めの文字がPもしくはLTでないかチェックします。
- P225/70R16
- LT225/70R16
もしも上記のような表示となっていれば、RTAというアメリカの規格のタイヤです。
ちなみPは乗用車用のタイヤを意味する「Passenger Car Tire」から、
LTは小型トラック用のタイヤを意味するLight Truck(小型トラック用タイヤ)からきています。
RTA規格はオフロードタイヤなどで見かけることが多いです。
表記があった
【確認完了】 そのタイヤは「RTA規格」です。
表記がなかった
【確認完了】 そのタイヤは「JATMA規格」です。
各規格ごとの負荷能力を調べたい方はこちらから【空気圧別負荷能力対応表】
自分のタイヤの規格がわかったら、あとは適正空気圧を確認して、空気を入れに行くだけです。
適正空気圧は『空気圧別負荷能力対応表』から確認できます。下記の2点を事前にチェックしたうえで調てみてください。
- 履いているタイヤのロードインデックス(LI値)
- 「指定空気圧表示」シール
国内のタイヤメーカーのサイトなどでもこの表は確認できますが、
このサイトだとそれぞれの規格が同じページで見ることができる、という理由からタイヤファクトリー様のリンクを貼らせて頂きました。
まとめ
規格が異なるタイヤへ履き替える場合、ドライバーは空気圧に注意する必要があります。
タイヤを純正品以外のものへ交換する際は、新しいタイヤの規格をカタログやメーカーのWEBサイトなどで確認するようにしましょう。
すでにマイカーについているタイヤの規格が知りたい場合は、今回紹介した方法で調べてみてください。
- カーブでふらつく…
- タイヤの端だけ減る…
- 乗り心地が思ったより良くない…
- ハンドルが重い…
- 燃費が悪化した…
「タイヤを買い替えたが、前のタイヤよりも良くない」と感じる場合、もしかしたらタイヤの規格が変わった可能性があります。
空気圧を適正にしてあげることで、このような不満が解消するかもしれません。
みなさんも一度、マイカーの「タイヤの規格」についてチェックしてみませんか?



コメント
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