トヨタの「A80型スープラ」は、今から20年前にデビューした絶版車です。
いまあらためて見ると、なんだかナマズのような見た目でそれほどかっこよくない気もします。
しかしこのクルマ、日本だけではなく世界中に熱狂的なファンが存在しています。
今回はそんなA80型スープラの魅力について解説します。
80スープラとは?
A80型スープラ(以下、80スープラ)は、日本市場では2代目(北米市場では4代目)にあたる、当時のトヨタの最上級スポーツモデルです。
1993年のデトロイトモーターショーで”THE SPORTS OF TOYOTA”というキャッチコピーの下に発表されたこのモデルは、同年1993年〜2002年までの10年間販売されました。
80スープラのスペック概要
販売期間 | 1993〜2002年 |
ボディタイプ | 2ドアクーペ |
駆動方式 | 後輪駆動 (FR) |
エンジン形式 | 3.0L 直6自然吸気/ 3.0L 直6ターボ |
トランスミッション | 6速マニュアル/ 4速オートマチック |
サスペンション | 前・後輪 ダブルウィッシュボーン |
ホイールベース | 2550 mm |
全長 | 4520 mm |
全幅 | 1810 mm |
全高 | 1275 mm |
重量 | 1410 – 1570 kg |
車両価格 | 約300〜450万円 |
デザインについて
80スープラは、トヨタのフラッグシップスポーツにふさわしく、大排気量のエンジンを搭載したハイパワー車でした。
そのパフォーマンスを受け止めるボディは、当時のスポーツカーの中でもかなり大柄で重厚感のあるデザインです。
上級グレードでは大型のリヤスポイラーも装着されており、純正状態でも迫力は満点です。
スタイリングについては”Gフォース フォルム”と呼ばれるデザインコンセプトのもと、筋肉質かつ艶めくような美しさを表現しています。
フロントについては、広大なボンネットと大きなエアインテークが特徴的で、このクルマのハイパフォーマンスさを象徴するデザインとなっています。
リヤについては、スパッと切り落としたようなテールの処理によりボリューム感が強調されており、とてもグラマラスな印象です。
フロント片側3眼、リア片側4眼のライトレンズも独特な形状となっており、一目見たら忘れられないような強烈なインパクトがあります。
80スープラのボディは空力的にも優れており、高速走行時の操縦安定性が先代よりも格段に向上しています。
当時の日本車では珍しく、ボディ下にまで及ぶ整流対策が施されています。
CD値 (空気抵抗係数) | 0.30 |
CLf値 (フロント揚力係数) | -0.01 |
CLr値 (リア揚力係数) | -0.03 |
パフォーマンスについて
エンジン | 当時のトヨタ最強エンジンである2JZ-GTEエンジンを搭載。 |
駆動方式 | スポーツカーとしての運動性能と操作性を追求したフロントエンジン、リアドライブのFR方式を採用。 |
トランスミッション | 高効率かつ高耐久のゲトラグ社製6速マニュアルトランスミッションのほか、4速オートマチックトランスミッションも選択可能。 |
サスペンション | 前輪ダブルウィッシュボーンを標準装備。上級グレードでは、左右のショックアブソーバーを協調制御する”REAS”も装備。 |
ABS (アンチロック・ブレーキ・システム) | 後期型では専用のスポーツABSを搭載ブレーキング時のタイヤロックを防ぎ、操作性と安全性を向上させる。 |
トラクションコントロールシステム | タイヤのスリップを検知してエンジン出力を制御し、トラクションを維持する。 |
LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル ) | 左右のタイヤ間の駆動力を最適に分配し、コーナリング時の走行性能を向上させる。 |
1000馬力にも耐える鬼耐久の2JZエンジン
80スープラを語る上で外せないのが、直列6気筒3リッターの「2JZエンジン」です。
このエンジンは、ヤマハとの共同開発により生まれたエンジンで、
- ターボ仕様の2JZ-GTE
- NAモデルの2JZ-GT
の2種類がグレードにより、それぞれ搭載されています。
2JZ-GTE | 2JZ-GE | |
エンジン形式 | 3リッター 直列6気筒 | 同左 |
過給器 | 有り | 無し |
最大出力 | 280馬力(日本) 320馬力(北米) | 220馬力 |
最大トルク | 前期44.0kg·m 後期46.0kg·m | 29.0kg·m |
特筆すべきはターボ仕様の”2JZ-GTE”で、JZ系最強のエンジンに位置付けられています。
最大出力については、日本仕様で国内自主規制値の上限の280馬力、北米仕様では320馬力を叩き出します。
日本仕様では国内自主規制の都合から意図的にデチューンされていますが、実際のエンジンの馬力は上記の数値を上回るものだったという噂もあります。
当時の国産スポーツカーには280馬力のモデルがいくつかありましたが、実際に280馬力を達成していたのは、
- トヨタ・スープラ
- 日産・スカイラインGTR
の2台だけしかなかったと言われています。※あくまで噂です。
2JZエンジンは、3リッターの大排気量かつ鋳鉄製シリンダーブロックを採用しているため、チューニングによる大幅なパワーアップにも耐えられる造りになっています。
そのポテンシャルは他のエンジンと比較しても桁違いに高く、ブーストアップ+給排気系統のカスタムのみで400馬力近くまで到達することが出来ます。
適切なチューニングと各部の強化を行えば、1000馬力オーバーも目指せるほどの驚異的な耐久性を誇るモンスターエンジンです。
そのためチューニング業界での人気は非常に高く、80スープラはドリフトやドラッグレースなどのベース車として引っ張りだこの存在となっています。
複雑かつ贅沢なサスペンション機構
80スープラのシャシーは高級クーペのソアラ(Z30系)をベースとし、前後ともにダブルウィッシュボーンサスペンションを採用しています。
軽量・高剛性を実現すべく鍛造アルミ性のアッパーアームを採用しており、ソアラよりもコストの掛かった豪華な造りをしています。
ショックアブソーバーに関しても、ヤマハが開発した”REAS(Relative Absorber System/リアス)”と呼ばれる凝った機構を採用しています。
このシステムは、左右のショックアブソーバーが相互連携するようオイル流路を連結しているのが最大の特徴です。
中間部には減衰力を制御するためのユニットが設けられており、走行状況に応じて最適な減衰力となるようユニット内部で油圧調整が行われます。
これによりコーナリング時や凸凹のある路面において、優れた安定性と快適性を高次元で両立させています。
電子制御を用いないシンプルな機構であるため、違和感のない自然な作動フィールも実現しています。
グレード展開について
NAモデル
SZグレード
エンジン | 3リッター 直列6気筒 自然吸気エンジン |
過給器 | 無し |
トランスミッション | 5速マニュアル/ 4速オートマチック |
タイヤサイズ | 前・後輪とも 225/50 ZR16 (最終型のみ後輪245/50 ZR16) |
ブレーキサイズ | 16インチ |
REAS | 無し |
トルセンLSD | 無し |
車両価格 | 約300万円前後 |
SZ エアロトップ グレード
エンジン | 3リッター 直列6気筒 自然吸気エンジン |
過給器 | 無し |
トランスミッション | 4速オートマチック |
タイヤサイズ | 前・後輪とも 225/50 ZR16 |
ブレーキサイズ | 16インチ |
REAS | 無し |
トルセンLSD | 無し |
車両価格 | 約320万円前後 |
SZ-Rグレード
エンジン | 3リッター 直列6気筒 自然吸気エンジン |
過給器 | 無し |
トランスミッション | 前期:5速マニュアル 後期:6速マニュアル |
タイヤサイズ | 前輪225/50 ZR16 後輪245/50 ZR16 |
ブレーキサイズ | 16インチ |
REAS | 有り |
トルセンLSD | 前期:オプション 後期:標準装備 |
車両価格 | 約350万円前後 |
ターボモデル
RZ−Sグレード
エンジン | 3リッター 直列6気筒 ターボエンジン |
過給器 | 有り |
トランスミッション | 6速マニュアル/ 4速オートマチック |
タイヤサイズ | 前輪225/50 ZR16 後輪245/50 ZR16 (17インチはオプション) |
ブレーキサイズ | 16インチ (17インチはオプション) |
REAS | 無し |
トルセンLSD | 有り (6速マニュアルのみ) |
車両価格 | 約340〜380万円 |
RZグレード
エンジン | 3リッター 直列6気筒 ターボエンジン |
過給器 | 有り |
トランスミッション | 6速マニュアルのみ |
タイヤサイズ | 前輪235/45 ZR17 後輪255/45 ZR17 |
ブレーキサイズ | 17インチ |
REAS | 有り |
トルセンLSD | 有り |
車両価格 | 450万円前後 |
80スープラが人気なワケとは?
80スープラの評価は、その生産が終了した後も高まり続けています。
90年代の中古車は”ネオクラシック”と呼ばれ、近年人気が再燃しているのも一因といえます。
80スープラは元々人気車でしたが、販売終了後も人気は衰えるどころかますます需要が高まっているのが現状です。
現代の自動車市場では、良好な状態を保つ80スープラは希少性と人気の高さから高値で取引されています。
『ワイルドスピード』への登場で知名度も急上昇した
現在、80スープラの影響力は車好きだけでなく、ポップカルチャーにまで及んでいます。
映画『ワイルド・スピード』シリーズに登場したことでその存在は全世界に知られることとなり、スポーツカーのアイコンとしての地位を確立しました。
特に、第一作では主人公の愛車として劇中最強の性能を誇り、鮮烈な印象を残しています。
そのため、アメリカでは80スープラはカルト的な支持を得るまでに至っています。
Q: A80スープラが映画『ワイルド・スピード』で使用されたのはナゼ?
A: 映画『ワイルド・スピード』のプロデューサーは、ストリートレースカルチャーの象徴としてスープラを選びました。
また、主役の一人であるポール・ウォーカー自身がスープラのファンであり、その影響も大きかったと言われています。
まとめ
80スープラは、そのデザイン、パフォーマンス、そして未来への影響力から、自動車の歴史における重要なマイルストーンと言えます。
その人気は今日でも色あせることなく、むしろ増す一方であり、新モデルが登場した現在でもその影響力は確固たるものとなっています。
80スープラは単なる過去の名車ではありません。
その豊かなカルチャーやコミュニティが生まれ、多くの車好きやチューナー達がこの車を愛し、維持し、さらには進化させてきたことで、スープラは生き続けています。
それは現代のチューニングカルチャーに大きな影響を与え、自動車愛好家の間で絶えず新たな話題を提供しています。
今後もその影響力は続き、新たな自動車愛好家を魅了し、そして刺激を与え続けるでしょう。
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