クルマの屋根の「ヒレ」って何のために付いてるの?

知識は可能性

みなさんは運転していて気になったことはありませんか?

自分の前を走っているクルマの屋根の後ろの方からピョコンと突き出ているヒレのようなパーツの存在に。

今回はこの「出っ張り」の正体について調べてみました。

クルマに詳しい人・詳しくない人どちらが読んでも損はない内容だとおもいます。

ヒレの正体はアンテナだった

このヒレのような出っ張りの名前は

  • シャークフィンアンテナ
  • ドルフィンアンテナ

といいます。

サメやイルカのヒレ(フィン)のような形をしていることから、この名前で呼ばれています。

このパーツにはAM/FMラジオなどを受信するためのアンテナとしての役割があります。

当記事ではこれらの総称として、以下『フィンタイプアンテナ』と呼ぶことにします。

フィンタイプアンテナは自動車のアンテナとしては比較的新しいタイプで、2001年にBMWが初めて採用しました。

以降、海外のメーカーのみならず日本のメーカーも続々と採用しています。

高級ブランドのレクサスは『LC』と『LX』を
除き、全ての車種にこのタイプのアンテナを
採用している。画像は『LC』

当初は高級車が中心でしたが年々採用するモデルは増えていき、現在は軽自動車にも装着され始めています。

変わり種として、ヒレではなく刀の形をした「ブレードアンテナ」というものもあります。

2013年10月発売の『シャア専用オーリス』。
「シャア専用ザク」をモチーフにした
アンテナデザインとなっている。
シャークフィンアンテナが無いクルマたち

では、このような「ヒレ」がないクルマはどうやってラジオなどの電波を拾っているのでしょうか?

先にも触れたように、自動車のアンテナはフィンタイプだけではありません。

  • ロッドアンテナ
  • ガラスアンテナ
  • ポールアンテナ

色々な種類がありますが、どのタイプも「電波を受信する」という目的は同じです。

あなたの車にも、この内のどれか1つが装着されているはずです。

下記に、フィンタイプを含めた4種類のアンテナについて、それぞれの特徴をまとめてみました。

ロッドアンテナ(1950年代~)
かつて主流だったのがこのタイプ。
コスト重視の商用モデルには
現在も採用されている。画像は
現行モデルの『NV200バネット』

金属製の細長い竿状のアンテナ。手動伸縮式が主流で、普段は短く収納しておける。

近年は採用車種が激減しているが、商用車の一部では未だに採用しているものもある。

電波受信に適切な長さがあるため受信感度が良く、低コストなのがメリット。

デメリットは、障害物に引っ掛けやすい、経年劣化でロッドの伸縮する部分が接触不良を起こしやすいこと。

ガラスアンテナ(1970年代~)

フロント、リア、サイドガラス部分に埋め込むタイプのアンテナ。

従来のロッド式の難点であった、耐久性とデザイン制約の問題を解消するべく開発された。

デメリットは、アンテナとしてはかなり高額な部類であること、ミラータイプのウィンドウフィルムを貼ると感度低下やノイズが入ること。

ポールアンテナ(1990年代~)
長さが短い分感度的には不利だが
素材や設計を工夫することでロッド式と
遜色ない性能に達している。
画像は『プリウス』の過去モデル。

ロッドアンテナよりも太いが、その分大幅に短縮化されているタイプ。

樹脂製でポールの内部にコイル状のアンテナが詰まっている。多くの車種が可倒式を採用。

軽やコンパクトカーを中心に、現在主流となっているのがこのタイプ。

ロッド式に比べてスマートな見た目で、風切り音が抑えられることがメリット。

デメリットは、ロッド式に比べコストがかかること。

フィンタイプアンテナ(2000年代~)
現行モデル『CX-3』では高さを
抑えただけではなく美しく見えるよう
シェイプを効かせたデザインを採用。

ポール式と比べても、さらにスッキリしたデザインが特徴のアンテナ。

風切り音が最小限に抑えられること、折りたたんだり収納する必要がないことがメリット。

コンパクトなフォルムから、感度的には他のタイプに比べ不利。コスト的にはポールアンテナとガラスアンテナの中間に位置し、比較的高額である。

このように自動車の歴史とともに、アンテナのタイプも移り変わっていることがわかります。

意外かもしれませんが「電波の受信感度」という点からみれば、70年以上も前から存在するロッドアンテナが形状的に一番有利ですし、コストも安く済みます。

アンテナとしては優秀なロッド式なのですが、ラジオを聴くときには全て引き出すことが推奨されているため、天井にこすったり風圧で曲がったりと破損のリスクがあります。

これらに加え、デザイン的な制約も大きかったことから、新たなタイプのアンテナに取って代わられることになります。

  • 小型・軽量化
  • より良いデザイン
  • より高い耐久性
  • より良い使い勝手(洗車時に収納しなくていい)

フィンタイプのような新しい形状のカーアンテナでは、これらを追求しながらロッド式と遜色ない性能を出せるように研究開発が進められ実用化に至っています。

トヨタも苦労したフィンタイプアンテナの開発

小さなフィンにアンテナを組み込むのが難しいことがわかるエピソードをひとつ。

2014年に『86』を改良した際ポールタイプ→フィンタイプに変更しているが、トヨタ車でラジオ受信機能を搭載したのはこのモデルが初めてだったそう。

それまでにもフィンタイプアンテナを装備した車種はあったが、トヨタが想定する受信感度に達しなかったため、テレマティクス用のアンテナ機能のみ与えられていた。

ラジオ受信用のアンテナはガラス埋込み式で対応していた。

※テレマティクスについては下記を参照

変わったのはカタチだけではない

かつてカーアンテナといえば、ラジオの電波を受信するだけのものでした。

しかし時代の流れとともにカーアンテナの多機能化が進み、様々な電波を受信する目的で用いられます。

  • カーナビのGPS信号
  • リモコンキーの電波 など

近年では、車両に通信機能を搭載して、リアルタイムな各種情報を送受信する「テレマティクス」というシステムも導入されています。

テレマティクスで送受信できるもの
  • 渋滞情報
  • 気象情報
  • 緊急通報機能
  • 車両盗難時の追跡機能 など

テレマティクスの新しいところは、情報センターからの電波を受信するだけではなく、送信も出来るようになったこと。

つまり双方向の通信が可能になったわけです。

導入した当初は「使えない」という意見も多かったのですが、インターネットへの常時接続が可能になったことで、利便性・実用性は確実に向上しています。

このような常時接続型の通信機能を有したクルマが、最近耳にすることが多くなった「コネクテッドカー」と呼ばれるものです。

コネクテッドカーのアンテナは日夜、ネットワーク通信を頻繁に行っているわけです。

クルマの進化に伴い、アンテナは形状だけでなくその中身も高性能化していることがわかります。

テレマティクスのイメージ
出典:あいおいニッセイ同和損害保険
オプション機器のためのアンテナもある

元々カーナビやテレビがない車に機器を後付けしたいとき、アンテナはどうするか?

もちろん増設が必要になるが、このような場合、手軽な「フィルムアンテナ」が用いられる。

窓ガラスに貼るタイプのアンテナ。
カーナビや地デジアンテナとして定番。

(フィルムアンテナではないが、)ETCやドライブレコーダーのアンテナも窓ガラスなどに貼り付けるタイプが多い。

自分のクルマもフィンタイプに変更できる?

スタイリッシュな見た目から、人気のあるフィンタイプアンテナ。

自分が今乗っている車のアンテナを、後からフィンタイプに変更することはできるのでしょうか?

答えはイエスです。各パーツメーカーから後付可能なフィンタイプアンテナが販売されています。

カー用品メーカーの「ビートソニック」では
車種専用品から汎用品まで
幅広いラインナップを取り扱っている。

ただし、注意すべき点がいくつかあります。

1つめは、交換できるのはポールアンテナ→フィンタイプのみということ。

上記以外のケースでは、基本的に変更はできません。

AM/FMラジオ受信以外の機能を持つような高機能アンテナの場合も、交換は原則としてNG。

自分の車に取り付けられるか、まずは適合をよく調べてから購入するようにしましょう。

もう1つは、電波の受信状況が悪くなる可能性があるということ。

車のアンテナの設計は想像以上にシビアです。

車は移動体なので、360°どの位置からでも電波をキャッチできる性能が求められます。

あのトヨタでさえも、フィンタイプアンテナの開発には苦労したのですから、アフターパーツで取付ける際には多少の性能ダウンは覚悟しなければなりません。

取付けは素人でも問題無いレベル

わたしも過去にDIYでフィンタイプアンテナを取付けした経験があります。

取付作業自体はドライバーさえあれば、誰でも出来るような内容です。

ただし走行中に外れたりすると危険ですので、取付けは確実に行うようにしましょう。

特に本体を両面テープで固定する前の脱脂は必ず行ってください!

ポールアンテナを外して、ネジで
台座にアンテナ線を固定。
あとは両面テープで本体を
貼付ければ完成。

有名メーカーの製品だと1万円前後しますが、私が購入したのは本体価格1980円のもの。

取付けして半年ほどで色褪せが気になったため、元のポールタイプに戻しました。

ですが、アンテナ感度的には問題無く、外れたりする気配もありませんでした。

取付けを検討している人は、以下のような製品を選ぶのが良いかとおもいます。

  • 車種に適合するもの
  • ブースター付きのもの
  • 固定用の両面テープが全周に貼られているもの(内部への雨水の侵入防止のため)
  • 突起が丸まっているもの(外部突起規制に対応するもの)
フィンタイプはもはや古い?

よりコンパクトに、より目立たないようにという目的から開発されたフィンタイプアンテナ。

その方向性を突き詰めていくと、もはや「アンテナの存在を無くすことはできないか?」という結論にまで至ります。

結果として、デザイン重視の車種や背の高い車種を中心に、ガラスアンテナが再び採用されつつあります。

現行モデルの『セレナ』ではリアサイド
ガラスにアンテナが組み込まれている。

異なるアプローチとして、「スポイラーに埋め込む」タイプのアンテナも高級車を中心に、新しいモデルには搭載されています。

画像はルーフスポイラー埋め込みタイプ。
このほかに、バンパーやトランクリッド
にも搭載することが可能。

最新のカーアンテナは「魅せる」のではなく、「隠す」というのがキーワードになっているようです。

やっぱりスポーツカーはフィンタイプ?

フィンタイプの形状は、流線型でいかにも空力的に優れていそうなイメージ。

実際、カーレースの世界では「シャークフィン」と呼ばれる空力パーツも存在する。

シャークフィンは気流を整えて
車体を安定させる効果がある。
事故防止の観点からレースによっては
設置が義務化されている場合も。

では、市販車の場合はどうか?

確かにフェラーリや、BMWのハイパワーモデルでは、フィンタイプのアンテナが用いられていたりする。

ただし、ポルシェやGTRなどの場合はルーフ(屋根)にアンテナは付いておらず、車体に内蔵されている。

さらにいうと、フェラーリでもフィンタイプアンテナが付いていないモデルもある。

この事実から、ハイパフォーマンスカーにフィンタイプアンテナは「必須ではない」ということが言える。

超ハイパフォーマンスカーのブランド
である「ブガッティ」の各モデルにも
フィンタイプアンテナは付いていない。
カーアンテナが実現する、これからの世界とは?

以上、クルマの屋根に付いている「ヒレ」の正体に迫りつつ、カーアンテナの歴史と進化について解説してきました。

最後に、未来について少しだけ触れて終わりたいとおもいます。

2020年、カーアンテナの分野において新しい動きがありました。5G通信に対応した新たなアンテナの誕生です。

窓ガラスに設置することで、クルマが基地局化する、『WAVEATTOCH』というアンテナが開発されました。

その通信速度はテストコースで下り最大11Gbps、一般道でも3.8Gbpsという驚異のものです。

課題としては、既存のカーアンテナとノイズ干渉しない位置を特定するのが難しいとのこと。

このアンテナの需要が高まれば、近い将来、今付いているアンテナの方が無くなるのかもしれません。

ガラス一体型5Gアンテナ
『WAVEATTOCH』
出典:NTTドコモ

先述した「コネクテッドカー」の登場により、ネットワークを通じて様々なモノと「つながる」時代がやってきました。

  • スマホやPCとつながる
  • 道路上に設置された機器とつながる
  • 他車とつながる

これにより、スマホでのクルマの遠隔操作 、先行車との連携による自動追従運転、赤信号の待ち時間のお知らせが可能になりました。

現時点では「つながることのできるモノ」の数が少ないため、今後いかに普及率を高められるかがカギとなります。

富士経済の調査結果によると、2035年のコネクテッドカー普及率は世界規模でみた場合で乗用車は80%、商用車では75%ほどになると見込まれているそうです。

その頃には完全自動運転が実現して、私たちの想像の遙か先を行く未来が待っているのかもしれません。

アンテナの進化はまだまだ終わらないでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました